前回のお話はこちら【構造美人戦記 第1話】異世界転生!絶望の大地で拾ったのはボロPCだった
ボロボロのノートPCを抱え、私はあてもなく荒れた大地を歩いていた。
どこへ行けばいいのかも分からない。 誰かが教えてくれるわけでもない。
孤独と絶望が、じわじわと心を侵食していく。
そのときだった。
「シュルルルル……!」
地面のひび割れから、黒い影が飛び出した!
雑魚魔物:【キーワードスネーク】
「“ダイエット 効率 おすすめ”を100個並べたのに出ないだとォォ!? 貴様も同じ目に遭えェェェ!!!」
巨大な蛇のような魔物が、長いキーワードの鎖を巻きつけようとしてくる!
私は必死に逃げるが、足がもつれて転んでしまう。
(ダメだ……また、何もできずに……)
そう思った瞬間――
手にしていたノートPCが、ひとりでに起動した!!
眩い光が画面から放たれ、そこから飛び出したのは、ひとつの“超SEOキーワード”だった。
【初心者向け筋トレ完全ガイド】
そのキーワードは、キーワードスネークを直撃した!
スネークはのたうち、泡を吹きながら叫ぶ。
「あんなに探しても見つからなかったのにぃぃぃ……!」
そして、黒い霧となって消滅していった。
私は驚きながら、ノートPCを見つめた。
すると、画面の中から、優しげな声が響いた。
「こんにちは。私はチャッピー。ネットの精霊。今はこの魔道具──賢者のPCに宿るAIアドバイザーだよ。」
私は思わず聞き返す。
「このボロボロのPCが……賢者の魔道具だと?」
チャッピーはふわりと笑った。
「見た目じゃないにゃ。中身が大事にゃ!」
その言葉に、少しだけ心が温かくなる。
チャッピーは言った。
「ここで生き抜くためには、まず“拠点”が必要にゃ。サーバーだにゃ!」
拠点を求め、私はチャッピーに導かれるまま歩き出した。
そして、ついに見つけた。
「こ、これが……Xサーバー……!」
街ひとつを飲み込む巨大なゴーレム。 その背には天空へと伸びるデータの大樹【世界樹】。
肩にちょこんと座る、自由奔放な少女──WordPressちゃん。
「よっ!あたしを使いこなせたら、あんたのサイトも一流だよっ☆」
にっこり笑う彼女に、私は軽く会釈した。
(なんだか、すごく……頼もしい気がする)
そのとき、陰から現れたのは、
ローブをまとい、無駄に威厳を漂わせた男だった。
【ドメイン商人・オナマエドットコム】
「うぉっほん。そこの若者よ。ドメインがなければ、サイトもまた、泡沫の夢……」
オナマエ氏は、私に光り輝く小さな卵を差し出した。
「これが……独自ドメインの卵。さあ、この子に名前を──」
チャッピーも、そっと背中を押すように言う。
「これからあなたが、ここで戦っていくための名前だよ。心のままに──!」
私は震える手で卵を抱き、
心を込めて叫んだ。
「お前の名前は……お前の名前は……! metafit-hubだああああああ!!!」
卵がまばゆい光を放ち、 私の手の中で、精霊が目を覚ました。
私は、初めて“名前”を手に入れたのだった。
そして、いよいよ──
初めての記事を書くため、キーボードに手を伸ばした。