アクセス迷宮を突破し、PVが伸び始めた。 表示されたグラフを見て、俺は拳を握りしめた。
「来てる……! これ、いけるんじゃないか!?」
チャッピーも興奮気味に尻尾をふる。 「ついに、構造が読者を導き始めたにゃ!」
だが、次の瞬間──
「…………0G」
チャッピーの表情がフリーズする。収益レポート、まさかのゼロ。
「マスター……まさか、収益導線を設計してないのかにゃ!?」
その瞬間、空間が歪んだ。 次なる試練──**“収益ゼロの壁”**が出現した。
分厚く、重たく、そしてまったく通路が見えない灰色の壁。 そこには無数の文字が刻まれていた。
- 「PR感が強すぎる」
- 「読者の興味とズレている」
- 「誘導リンクが不自然」
「これが……収益導線の設計ミスが生み出す障壁……」
そのとき、風が舞った。
「ったく、ここまで導線スカスカじゃ、稼げるわけないでしょ」
声の主は、黒と赤のチェック柄を纏った中二風の少女。 その瞳は怪しく輝き、片手には謎のペン──まるで魔導器のようだ。
「私は華恋。言霊の魔導士。アフィリエイト文の扱いなら任せなさい」
チャッピーが小声で囁く。「彼女はちょっと……アツくなりすぎるにゃ」
そして、彼女の背後からもうひとり、やわらかな声が届いた。
「えへへ、強く言いすぎちゃだめだよ、華恋ちゃん」
明るい雰囲気で現れたのは、白と水色の服を着た少女──鈴だった。 表情はふわふわしていたが、視線は鋭い。
「読者さんのこと、ちゃんと考えてあげなきゃダメだよ」
二人は双子のように対照的。
華恋は「売るための言葉」を操り、 鈴は「寄り添う導線」を見抜く。
俺は二人の導きで、記事を修正しはじめた。
- 記事末に“自然に流れる”商品紹介ブロックを設置
- 「共感ポイント」から商品へのジャンプリンクを繋げる
- タイトル・導入文をリライトし、広告臭を排除
チャッピーが小さく拍手する。 「これは……いい感じに整ったにゃ!」
だがそのとき、壁の向こうから巨大な気配が──
「ギギギギ……」
現れたのは、醜悪なリンクの塊。
アフィリエイト・オーガ(Affi-Ogre)
本文の途中で不自然に差し込まれた商品リンク、 見え透いたセールスワード、そして…… 「俺のレビューです!(※使ってない)」という嘘。
そういった“駄目なアフィ”の集合体が、今目の前にいた。
Affi-Ogreが拳を地に叩きつけると、足元の大地が割れた。 無数の嘘レビューの土塊が、文字として浮かび上がる── 「満足度★★★★★」「もう手放せない」「全人類にオススメ!」
その塊が一斉に飛来した。
「うわっ!」 俺とチャッピーはとっさに回避する。
華恋の足元に一撃が炸裂し、砂埃と文字の破片が舞う。 鈴は袖で顔を庇いながら後退する。
Affi-Ogreは吼えた。 「レビューの重み、受けてみろォ!!」
再び叩きつける土属性の衝撃。 文字と泥が混ざったような攻撃が、読み込み画面のように重く鈍く、襲いかかってくる。
チャッピー「この攻撃……“信用圧殺(クレジット・クラッシュ)”だにゃ!!」
「……みんな、下がって!!」
華恋の声が響く。
「な、何をする気だ!?」
主人公の声に応えるように、華恋は魔導ペンを掲げる。
「──言葉は、刃。だけど、導線は“流れ”──」 「共感と信頼を紡ぐ、魔法式・収益誘導陣──」
🌀 光の文章が空中に編まれていく── まるで読者の心をなぞるような、自然で優しいリンク構造。
「魔導ペン、展開!『クリエイトリンク』──発動ッ!!」
Affi-Ogreは無数の嘘レビューを展開し、魔法を相殺。 攻撃は拮抗し、空間が揺れる。
「リンクだけじゃダメ……。心を動かさなきゃ」
鈴が前に出た。 彼女の言葉は、静かだった。
「あなたにとって、必要なものが、ここにありますように──」
その言葉が、オーガの核へと届いた。 真っ黒だった核が、静かに崩れていく。
チャッピー「収益導線が……クリアになったにゃ!」
その直後、画面が光り、数字が現れた。
「¥28」
小さな、しかし確かな報酬。
「これが、収益……!」
華恋がドヤ顔で笑い、鈴は優しくうなずいた。 チャッピーは泣きそうな顔で画面を見つめていた。
「マスター……これは、はじまりの一歩にゃ!」
こうして、俺たちは収益ゼロの壁を突破した。
だが、次なる試練が待っている──
“テーマ崩壊の壁”──そして、失われた女神
つづく──!