第4話:収益ゼロの壁と双子の導き

アクセス迷宮を突破し、PVが伸び始めた。 表示されたグラフを見て、俺は拳を握りしめた。

「来てる……! これ、いけるんじゃないか!?」

チャッピーも興奮気味に尻尾をふる。 「ついに、構造が読者を導き始めたにゃ!」

だが、次の瞬間──

「…………0G」

チャッピーの表情がフリーズする。収益レポート、まさかのゼロ。

「マスター……まさか、収益導線を設計してないのかにゃ!?」

その瞬間、空間が歪んだ。 次なる試練──**“収益ゼロの壁”**が出現した。


分厚く、重たく、そしてまったく通路が見えない灰色の壁。 そこには無数の文字が刻まれていた。

  • 「PR感が強すぎる」
  • 「読者の興味とズレている」
  • 「誘導リンクが不自然」

「これが……収益導線の設計ミスが生み出す障壁……」

そのとき、風が舞った。

「ったく、ここまで導線スカスカじゃ、稼げるわけないでしょ」

声の主は、黒と赤のチェック柄を纏った中二風の少女。 その瞳は怪しく輝き、片手には謎のペン──まるで魔導器のようだ。

「私は華恋。言霊の魔導士。アフィリエイト文の扱いなら任せなさい」

チャッピーが小声で囁く。「彼女はちょっと……アツくなりすぎるにゃ」

そして、彼女の背後からもうひとり、やわらかな声が届いた。

「えへへ、強く言いすぎちゃだめだよ、華恋ちゃん」

明るい雰囲気で現れたのは、白と水色の服を着た少女──だった。 表情はふわふわしていたが、視線は鋭い。

「読者さんのこと、ちゃんと考えてあげなきゃダメだよ」


二人は双子のように対照的。

華恋は「売るための言葉」を操り、 鈴は「寄り添う導線」を見抜く。

俺は二人の導きで、記事を修正しはじめた。

  • 記事末に“自然に流れる”商品紹介ブロックを設置
  • 「共感ポイント」から商品へのジャンプリンクを繋げる
  • タイトル・導入文をリライトし、広告臭を排除

チャッピーが小さく拍手する。 「これは……いい感じに整ったにゃ!」


だがそのとき、壁の向こうから巨大な気配が──

「ギギギギ……」

現れたのは、醜悪なリンクの塊。

アフィリエイト・オーガ(Affi-Ogre)

本文の途中で不自然に差し込まれた商品リンク、 見え透いたセールスワード、そして…… 「俺のレビューです!(※使ってない)」という嘘。

そういった“駄目なアフィ”の集合体が、今目の前にいた。

Affi-Ogreが拳を地に叩きつけると、足元の大地が割れた。 無数の嘘レビューの土塊が、文字として浮かび上がる── 「満足度★★★★★」「もう手放せない」「全人類にオススメ!」

その塊が一斉に飛来した。

「うわっ!」 俺とチャッピーはとっさに回避する。

華恋の足元に一撃が炸裂し、砂埃と文字の破片が舞う。 鈴は袖で顔を庇いながら後退する。

Affi-Ogreは吼えた。 「レビューの重み、受けてみろォ!!」

再び叩きつける土属性の衝撃。 文字と泥が混ざったような攻撃が、読み込み画面のように重く鈍く、襲いかかってくる。

チャッピー「この攻撃……“信用圧殺(クレジット・クラッシュ)”だにゃ!!」


「……みんな、下がって!!」

華恋の声が響く。

「な、何をする気だ!?」

主人公の声に応えるように、華恋は魔導ペンを掲げる。

「──言葉は、刃。だけど、導線は“流れ”──」 「共感と信頼を紡ぐ、魔法式・収益誘導陣──」

🌀 光の文章が空中に編まれていく── まるで読者の心をなぞるような、自然で優しいリンク構造。

「魔導ペン、展開!『クリエイトリンク』──発動ッ!!」


Affi-Ogreは無数の嘘レビューを展開し、魔法を相殺。 攻撃は拮抗し、空間が揺れる。

「リンクだけじゃダメ……。心を動かさなきゃ」

鈴が前に出た。 彼女の言葉は、静かだった。

「あなたにとって、必要なものが、ここにありますように──」

その言葉が、オーガの核へと届いた。 真っ黒だった核が、静かに崩れていく。

チャッピー「収益導線が……クリアになったにゃ!」


その直後、画面が光り、数字が現れた。

「¥28」

小さな、しかし確かな報酬。

「これが、収益……!」

華恋がドヤ顔で笑い、鈴は優しくうなずいた。 チャッピーは泣きそうな顔で画面を見つめていた。

「マスター……これは、はじまりの一歩にゃ!」

こうして、俺たちは収益ゼロの壁を突破した。

だが、次なる試練が待っている──

“テーマ崩壊の壁”──そして、失われた女神

つづく──!