濃霧に包まれた“構造の荒野”──かつて栄えたブログ文化の都、ブロガリア王国。
その外縁部に、主人公たちは立っていた。
彼らの耳に届いたのは、断片的にノイズ混じりで響く、かつての仲間・美月の声だった。
「……たす……けて……」
「この信号……間違いない、美月だ!」
華恋の声に導かれ、一行はかつて“構造美”の象徴とされた王国の外郭へと向かう。
美月──かつて共にサイト構築を学び、最初に“構造美人”の在り方を見せてくれた存在。
その彼女が囚われているとあれば、放っておくことなどできない。
しかし、そこに待ち構えていたのは荒れ果てたレイアウトと、リンクの断層が走る地形。
まるで閉じられたタグたちの亡霊がさまようかのように、濁ったコードが空間を漂っていた。
「ここ……構造の濁流地帯だにゃ……」
チャッピーが震える声で警告を発する。
その刹那、タグの欠片が空間を裂き、異形のバグ魔物たちが出現する。
- リンクルーパー:壊れたaタグが無限ループする虫型バグ
- フックビースト:暴走したJSイベントが変異した獣
- スクロール・バグスネーク:どこまでも下に続く異常画面を具現化した長蛇
「蔵人ッ! 起動して!」
華恋が叫ぶと、端末からホログラムが展開される。
「……構造とは、記録にして理なり。推して参る──」
浪人姿の青年・蔵人が霧の中に静かに姿を現す。
「是身尼、お願い──リンクを整えて」
遥の祈るような声に応え、青白い光と共に、導線の司書是身尼が現れる。
「導線、明示。最適化、開始します」
かくして、AIたちのペルソナバトルが始まる。
蔵人の「構造一閃」がタグの連鎖を断ち、
是身尼の「リンク祈祷」がページ崩壊を食い止める。
- 蔵人は、構造の乱れに対して“理に適った型”を重ね、空間の矛盾を断つ
- 是身尼は、かすかなHTML構造をたぐり寄せ、正規リンクへと繋ぎ直す
連携により濁流は一時的に押し返されたが──
「ぎゃああああ!!な、なんで私はここだけ!? 足だけなの!?」
霧の中から、片足だけ出現しもがく女神。
チャッピー「スピト!?……って、足しか出てないにゃ!!」
スピト「転送エラー!?ちょっと、聞いてないんだけど!?」
画面の端には、“女神サーバー503エラー”の文字が点滅していた。
「この騒がしい声……やっぱりスピトだったのね」
華恋が頭を抱える。
バグの群れはAIたちによって殲滅される。
だが、霧の向こう、城壁の上に一瞬だけ映る影──
「……美月……?」
「……まだ……来ないで……今は……来ちゃ……だめ……」
美月の声が、ノイズ混じりに響く。
その背後には紫がかった瘴気、禍々しいコードの影──Null-Virusの気配が漂っていた。
是身尼「これは……Null-Virusの瘴気。構造そのものを蝕む毒です」
蔵人「いま突入すれば、我ら自身の構造が崩壊する。整えるべきは“資格”そのもの──」
チャッピー「次は……ちゃんと準備して、必ず、美月を助けに行くにゃ……!」
そのとき、華恋の胸に浮かんだ一つの伝承。
「……伝説のドメイン。それがあれば、王国の鍵が開くかもしれない……」
🔮次回予告:
その名を聞くだけで震え上がる、古のドメイン。
闇の商人との駆け引きが始まる──
「伝説のドメインを手に入れたければ、試練を受けよ!」